トレンド予報(2021年4月)
暖かい春の影響か?社会的要因か?
夏商材の立ち上がりの重要な時期となりますが、昨年の3月は新型コロナウイルスの流行拡大に伴う緊急事態宣言があり、外出自粛や家庭内需要の増加により、商品需要が大きく変化しました。新型コロナウイルスの影響も一年を超えて、前年実績をベースとした販売計画が難しくなっている企業様も多いのではないでしょうか。
商品需要は、社会的要因に加えて、気象にも大きく左右されています。気象データを使って売上をシミュレーションし、気象による変動要因の大きさを推定することで、真の社会的要因の大きさを推定することが可能です。
気象データを使って過去の売上をシミュレーション
例えば2021年3月8日週から4月5日週の売上において、前年より売上が伸びた商材を見てみます。
前年は緊急事態宣言により、外出に伴って必要とされる商品の需要が軒並み落ち込みました。今年はそういった商品に回復傾向が見られますが、すべてがこうした社会的要因とは限りません。
この期間、今年は記録的な暖かさとなり、全国の平均気温は前年が10.7℃に対し、今年は12.6℃と1.9℃高くなりました。
例えば、鼻炎治療剤は前年比140%の伸びとなりましたが、伸びた要因の内訳は気温要因が11ptと算出され、社会的要因は残りの29ptと考えられます。日焼け&日焼け止めは、137%の伸びとなりましたが、そのうち気温要因が30ptとほとんどで、社会要因は7ptしかないことがわかります。外出需要の前年からの回復だけではなく、春の暖かさによっても売上が伸びた例と言えるでしょう。
一方、子供が家で飲むようなサイダーは、気温が押し上げ要因になっているのに対し、社会要因(家庭内需要の減少)が押し下げ要因となり、相殺されて前年比がほとんど変わっていないこともわかります。
前年よりも売上げが落ちた商材も見てみましょう。
乾麺は、前年比65%と落ち込みましたが、社会要因が-42ptとほとんどを占め、家庭内需要の減少が大きく影響していることが分かります。
一方、使い捨てカイロは、前年比73%でしたが、そのうち気温要因が-21ptとほとんどを占めていることが分かり、社会要因は-7ptしか影響していないことが分かります。
一部地域では3回目の緊急事態宣言が発表されましたが、これに伴う需要の変動を定量的に把握するためには、過去の売上実績から気温要因を切り分けることが重要です。販売計画を科学的・客観的に立案するには、これらの分析を行った上で、気象予測と組み合わせることが効果的です。
向こう一ヶ月の気温要因による売上予測
この先、気象要因による需要はどのように推移するでしょうか。
向こう一ヶ月、5月半ば頃にかけては、前年ほど顕著な暑さにはならない予想です。前年と比較すると、暑さによって売上が伸びる商品は、気温がマイナス要因となり、涼しさによって売上が伸びる商品は気温がプラス要因になるでしょう。例えば、涼しいほど伸びるハンド&スキンケアは気温要因で3pt増加、インスタントクリーム、リップクリーム、袋インスタント麺は2ptの増加となる一方、暑いほど伸びる果汁飲料は6ptの減少、美容&健康ドリンク、防虫剤なども5ptの減少が予想されています。ぜひ参考にしてください。(実際は、新型コロナウイルスの流行による行動変容の影響等が加わる点にご注意ください。)
日本気象協会では、株式会社インテージの保有する全国小売店販売データ(SRI)を用いた製造業向け簡易版商品需要予測サービス「お天気マーケット予報」を提供しています。気象と社会的要因による需要の変化をリアルタイムに監視しながら、気象予測に基づき約 260 カテゴリにおけ る 15 週先までの需要予測を行っています。
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