トレンド予報(2020年6月)

2020年春、社会的要因(外出自粛)と気象の要因を評価
~今年の夏の需要予測は~

2020年春は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛などの影響で消費行動が大きく変わり、商品需要に大きな変動がありました。一方、気象も変動が大きく、3月は全国的に気温が上昇し春の到来が早まりましたが、4月は一転して低温になるなど、寒暖の変化も商品需要に大きな影響を与えました。
商品の欠品のほか、過剰な在庫や廃棄ロスを削減するためには、こうした社会的要因や気象要因による需要の変動を定量的に把握し、気象情報を活用した適切な生産計画を立てることが必要です。
商品需要予測コンサルティングレポート6回目の今回は、企業の皆さまに、気象データを使ったシミュレーション結果から、今年春の外出自粛などの社会的要因や気象要因が商品需要に与えた影響について解説します。
また日本気象協会では、株式会社インテージの保有する全国小売店販売データ(SRI)を用いた製造業向け簡易版商品需要予測サービス「お天気マーケット予報」を開発し、気象予測に基づき約260カテゴリにおける15週先までの需要予測を行っています。最後に「お天気マーケット予報」による今年の夏の見通しを紹介し、社会的要因による変動も踏まえて解説します。

早い春の到来と寒の戻り


図1は、今年春の全国の週平均気温の推移です。3月は暖かかった前年をさらに上回る高温となり、東京で統計史上最も早い3月14日に桜が開花するなど、全国的に春の到来が早まりました。ところが、3月末には東京でも満開の桜に雪が積もるなど一転して寒の戻りとなり、4月は全国的に前年・平年を下回る気温で推移しました。特に4月中旬頃までは気温が横ばいとなり、季節の歩みが停滞していたことが分かります。

3月の高温と外出自粛による夏商材への影響

3月は気温が高く推移し、夏商材の多くは需要が前年よりも伸びると予想されましたが、緊急事態宣言による外出自粛などの影響により、予想ほど売り上げが伸びなかった商材と、予想より売り上げが伸びた商材とに、明暗が分かれました。

表1は、観測気温を使った3月の夏商材の売り上げのシミュレーション結果と、実際の売り上げとの比較です。シミュレーションによる予想前年比と、実際の売り上げとの前年比を照らし合わせてみると、実際には予想と大きく異なる変動をした商材が複数ありました。この実際の売り上げと予想の差が、外出自粛などの社会的要因による影響ととらえることができます。
例えば、そば、そうめんなどの乾麺の売り上げは3月の高温により前年比128.0%と予想されましたが、実際には159.3%まで伸びました。その差は31.3ポイントになり、外出自粛などの影響により家庭内需要が増えた分と考えられます。同様に、ケーキシロップなどが含まれるシロップ類は26.8ポイント、フルーツ缶詰は19.5ポイント伸びました。
一方で、3月頃から気温の上昇とともに売れ始める殺虫剤は、高温によって前年比132.8%まで伸びると予想されましたが、実際には109.7%の伸びにとどまり23.1ポイントの落ち込みとなりました。これは、外出自粛などの影響により、屋外での活動が抑えられたことが影響していると考えられます。同様に、日焼け&日焼け止めは39.9ポイントの落ち込みとなり、制汗剤は18.6ポイントの落ち込みとなるなど、アウトドア用品が大きな影響を受けています。さらには、花粉シーズンに需要が高まる目薬の売り上げは、今シーズンは花粉の飛散量が少ないことから前年比88.2%と予想されましたが、実際には予想をさらに下回る67.3%となり、20.9ポイントの落ち込みでした。
また、同じドリンクでも、野菜ジュースや栄養ドリンクは予想と実際の差が小さく、外出自粛による影響が小さいのに対して、スポーツドリンクは12.6ポイントの落ち込みとなりました。

4月の低温と外出自粛による夏商材への影響

4月は気温が低く推移し、夏商材の多くは需要が前年よりも落ちると予想されましたが、3月と同様に、予想より売り上げが伸びた商材と、売り上げがさらに予想を下回った商材とに、明暗が分かれました。

表2は、観測気温を使った4月の夏商材の売り上げのシミュレーション結果と、実際の売り上げとの比較です。
予想と実際の差がもっとも大きく出たのは、シロップ類でした。シロップ類にはケーキシロップのほか、かき氷シロップも含まれており、夏に向けては気温が高いほど売り上げが伸びる商材です。4月の低温の影響により、シロップ類は前年比96.9%と落ち込みが予想されましたが、実際には165.9%にもなり、69.0ポイントの伸びとなりました。このほか、乾麺、美容&健康ドリンク、サイダーも前年割れが予想されましたが、実際には前年より伸びる結果となり、アイスクリームや麦茶も、学校の休校などによる家庭内需要が増加したためか、予想よりも10ポイント以上伸びる結果となりました。
 一方で、予想よりもさらに落ち込みが大きくなったのは、日焼け&日焼け止め、殺虫剤、水虫治療薬、制汗剤などです。日焼け&日焼け止めは低温の影響で前年比92.2%が予想されましたが、外出自粛などによる影響がさらに45.5ポイント押し下げ、実際には前年比46.7%まで落ち込みました。3月には外出自粛などの影響が少なかった栄養ドリンクも7.0ポイントの落ち込みとなりました。

社会的要因と気象要因を切り分けて予測する

このように、商品の売り上げには、外出自粛などの社会的要因と気象による変動の両方の影響が含まれます。しかし、気象データを使って売り上げをシミュレーションすることで、気象要因と社会的要因を切り分けて、定量的に評価することが可能です。
3月の高温によって売り上げが伸びた分、あるいは4月の低温で落ち込んだ分の全てを、単純に外出自粛などの社会的要因ととらえてしまうのは誤りです。夏に向けて生産調整を行うにあたっては、気象要因と社会的要因を切り分けた上で、気象情報に基づく予測を立てる必要があるでしょう。

「お天気マーケット予報」による今年の夏の需要予測

日本気象協会では、株式会社インテージの保有する全国小売店販売データ(SRI)を用いた製造業向け簡易版商品需要予測サービス「お天気マーケット予報」を開発し、気象予測に基づき約260カテゴリにおける15週先までの需要予測を行っています。
 前年の夏は、7月に低温と日照不足が続き、夏商材の売り上げが大きく落ち込みました。今年の夏は、前年と比較すると7月の気温はかなり高いと予想され、梅雨明け後は東日本と西日本を中心に厳しい暑さになる予想となっています。前年と変わらない社会状況であると仮定すれば、夏商材の売り上げは前年よりも伸びるものが多くなるでしょう。その上で、社会的要因を考慮することが重要です。
例は、2020年5月22日時点での「お天気マーケット予報」によるスポーツドリンクの需要予測です。前年と変わらない社会状況であれば、売り上げは、前年と比較して7月を中心に大きく伸び、8月は前年と同程度で推移すると予想されています。ただし、スポーツドリンクの場合、外出自粛などの影響で3月には12.6ポイント、4月には5.1ポイント落ち込んでいるため、この落ち込みがいつまで続くのかを監視しながら調整していく必要があるでしょう。
「お天気マーケット予報」では今後、気象予測を用いた予測をベースに、社会的要因によるトレンドの変化を監視しながらサポートを行ってまいります。

日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトについて

近年、飛躍的に精度が向上している天気予報は、この15年で30%も精度が向上しているといわれています。
日本気象協会では独自の気象予報も開発しており、無償で公開している気象情報よりも高度化した、最大6カ月先までの予測情報を提供しています。
日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトでは、これらの高度化した気象のデータと商品の販売データなどを解析することにより、未来の商品需要量を高精度で予測する「商品需要予測」を行っています。
あらかじめ必要な商品の量がわかれば、つくりすぎによる食品ロスや製品の廃棄量を減らすことができます。
また年間計画立案時やマーケティング部門でのシーズン商品の立ち上がり・終売の予測に気象情報を活用することで、販売・広告戦略に活用いただけます。
 日本気象協会ではSDGsで掲げられている「目標12:つくる責任 つかう責任」の達成に向けて、活動を続けてまいります。