緊急事態宣言解除×気象  秋口の商品動向をデータから読み解く|トレンド予報11月

気象データ×統計から“真の社会的要因”を解析

今回は、季節外れの暖かさと緊急事態宣言解除が重なった10月の商品需要を振り返るとともに、この冬の需要を予測します。

暖かさが続いた9月27日週から10月11日週(3週合計)に着目して、前年より売上が伸びた商材/落ち込んだ商材の気象要因・社会要因について解説します。

気象の世界では9月から秋。今年の秋は、9月上旬に少し涼しくなり、「このまま秋?」と思いきや、その後は10月中旬にかけて全国的に気温の高い状態が続きました。季節外れの暖かさで夏商材は好調となったのではないでしょうか。

前年のこの時期の気象を振り返ると、北日本・東日本を中心に低気圧や前線、湿った空気の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多く、気温は概ね平年並みで推移しました。対して今年の該当期間は、高気圧に覆われやすく、晴れた日が多くなり、気温は平年よりも大幅に高い日が多くなりました。対象期間の3週平均気温の前年差は+3.4℃となりました。

一方、新型コロナウイルスの感染は徐々に落ち着きを見せ、緊急事態宣言が発出されていた地域でも10月1日を以って解除となりました。とはいえ、前年は緊急事態宣言なくして「第2波」が落ち着いてきたタイミング。Go To トラベル事業やGo To Eatキャンペーンによる消費喚起もありました。東京都内の人流データやテレワーク率はほぼ前年並です(出典:「V-RESAS、株式会社Agoop『流動人口データ』、東京都「テレワーク実施率調査結果」などより)。

売上に対する気象の影響度の高い商材は、売上データや新型コロナウイルスに関する情報だけでは、購買行動の変化が定量的に分析できません。日本気象協会では、気象データを使って売上を統計モデルでシミュレーションし、気象による変動要因の大きさを推定することで、真の社会的要因の大きさを推定する取り組みを行っています。

なお、社会的要因とは、気温では説明できない何らかの売上変化要因を指し、C(社会要因)=A(売上前年比)-B(気温要因)で推定しています。

売上分析に進みます。たとえば上の図で、外出時に利用する「日焼け・日焼け止め」に注目すると、前年比184%の伸びとなっています。内訳を見てみると、気温要因が+38pt、社会的要因は残りの+46ptと分析されます。

気象で説明できない社会的要因が半数を超えますが、「すべてが緊急事態宣言解除の影響ではない」という点がポイントです。「制汗剤(前年比135%)」の場合は、売上変化の約3分の2(22pt)を気象要因が占めています。思わず10月に制汗シートやスプレーを買い足してしまった人も多いのではないでしょうか。

「サイダー」・「乳酸飲料」・「100%ジュース」・「野菜ジュース」のような清涼飲料や「乾麺」(素麺を含む)では、むしろ売上変動のうち気象の影響が多くを占めることがわかります。

一方で、冬商材は軒並み苦戦となりました。鍋やおでんに使われる、「ちくわ」・「はんぺん」などの練り物や「鍋補完材」、「スープ類」、「シチュー」などは前年の7割~9割前後の売上となっています。いずれも、売上変動の大半を気象で説明できるカテゴリです。ただし、「鍋補完材」については前年と比べる社会要因による押し上げ効果も確認されます。外食控えが続く中で、気温高いながらも「初鍋」を楽しんだ人も、意外と多かったのかもしれません。

今回、「売上が伸びた商材」のうち、「日焼け・日焼け止め」以外にも、「殺虫剤」や「炭酸飲料」のような純粋な“夏商材”でも、「社会要因」が「気象要因」に匹敵する・上回るカテゴリが多くありました。人流データやテレワーク率など目に見える数字では前年との差は小さいものの、Withコロナの新たな価値観によって消費行動に変化が生じているのかもしれません。気象データや新型コロナウイルス関連データだけではなく、イベント情報や店頭キャンペーン情報、消費者アンケートなど新たなデータを組み合わせることで、より深い考察ができることが期待されます。

なお、日本気象協会では、人々の行動データや経済指標、商品の価格などを組み合わせて、多くの季節商材の売上分析や需要予測モデル構築を行っています。

気温1℃あたりの効果

ところで、このような売上分析の「気象の効果」はどのように計算しているのでしょうか。今回少し計算の一部を紹介します。

日本気象協会では、300を超えるカテゴリ(サブカテゴリ含む)のインテージSRI+データと気象の関係をあらかじめ分析し、独自の統計モデルの中で「気温1℃あたりの効果」を算出しています。たとえば、気温1℃あたり3%の売上効果があるカテゴリであれば、今回取り上げた期間(前年差+3.4℃)では約10%の気象効果があることがわかります。

先ほど取り上げたカテゴリについて夏商材・冬商材からいくつか実際の数字を見てみましょう。

プラスの商材はその週に、「気温が上がれば上がるほど売れる商材」、マイナスの商材は「気温が下がれば下がるほど売れる商材」を意味します。実際には当週の気温以外の気象要素も考慮していることと、週によって1℃あたりの効果が異なるため、先ほどの要因分析と完全に一致はしませんが、概ね傾向が表れていることがおわかりいただけたかと思います。

 日本気象協会では、このような気象の効果を商品別・エリア別・週別に計算し、過去の売上要因分析や商品の需要予測に活用。あらゆる企業様の経営分析・営業戦略・在庫管理などにお役立ていただいています。

この冬の気温要因による売上予測

この先、気象要因による需要はどのように推移するでしょうか。

前年12月と今年の1月は顕著な低温となりました。関越自動車道の大雪による渋滞など、記憶に新しい方もいるかと思います。ただし、寒さが厳しい期間は短く、2月以降は高温傾向となりました。いまのところ、今年の12月から1月にかけては全国的に前年ほどの寒さにならない見通しです。

商品需要で見れば、12月や1月は先ほど紹介した「はんぺん」、「シチュー」、「鍋補完材」などの冬商材は前年と比べるとやや売上が落ち込むところがあるでしょう。ただし、2019-2020年のような記録的な暖冬になる可能性は低いので、前年割れの数字が出ても慌てず対応することが大事です。

特に、2月、3月は前年よりも寒くなる予想ですので、「前年割れが続いていて、前年は2月・3月売上が伸びなかったから」という理由で、終売期の製造・納品をセーブしてしまうのは禁物です。季節商品においては、「前年比」、「前年実績」だけではなく、最新の気象予測と「前年の気象がどうだったか」を参考に、販売計画や需給計画を組み立てていただけると幸いです。

日本気象協会では、契約したお客様を対象に下図のような最大6ヶ月先までの気象予測を提供 しています。具体的に「前年より何℃高い/低い」という情報を併記することで、先ほど紹介した1℃あたりの効果と組み合わせて、定量的な販売の見立てにお役立ていただいています。

過去の売上を振り返る際に、「すべてが緊急事態宣言解除によるものだ」、「販促情報だけが唯一の説明因子だ」などと決めつけてしまっては、正確に要因を分析できません。「要因は一つではない」という視点から、気象データのような外部要因も含めた様々な因子を統計的に分析することが大事です。

また、日本気象協会では、株式会社インテージの保有する全国小売店販売データ(SRI +)を用いた製造業向け簡易版商品需要予測サービス「お天気マーケット予報」を提供しています。気象と社会的要因による需要の変化をリアルタイムに監視しながら、気象予測に基づき約 260 カテゴリにおけ る 15 週先までの需要予測を行っています。

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